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長野 宇規
バイオエコノミーとは何か
バイオエコノミーは海洋、陸域で生産される再生可能なバイオマスを資源としたエネルギー、素材、食品に依存する経済を指します(EC, 2018)。ヨーロッパ諸国を筆頭として世界各国で持続可能性の追求のための優先政策となっています。18世紀中ごろから19世紀にかけて、石炭の工業利用を機として起きた産業革命は人類に偉大な工業力をもたらしましたが、その結果として地球規模の環境破壊と地球温暖化が進みました。進行する地球温暖化を産業革命前と比べ1.5度以内の上昇に抑制するためには2050年までに大気中の温暖化ガスの濃度上昇をゼロにする(カーボン・ニュートラル)ことが必要とされています(パリ協定の合意内容)。これは化石燃料使用の停止を意味します。その後人類は再生可能エネルギーと再生可能な資源に依拠して温暖化ガス濃度の低下に励む必要があります。つまりバイオエコノミーは化石燃料産業を置き換える新しい産業形態を指すのです。
バイオエコノミーの概念 (Nagothu and Nagano, 2020)
バイオマスの利用は人類の営みの中で長らく行われてきたものですので新しいことではありませんが、バイオテクノロジーや現代の工業力、情報力の利用によって高度に利用することが新しい点です。そしてバイオマスは生態系の中で生産されますから、持続的な利用、使用後の安全な環境への還元が必須となります。
Reference
- European Commission (EC) (2018) ‘A new bioeconomy strategy for a sustainable Europe’, https://ec.europa.eu/commission/news/new-bioeconomy-strategy-sustainable-europe-2018-oct-11-0_en
- Nagothu, U. S. and Nagano, T.: The bioeconomy approach and sustainable development: A review of the concept, opportunities and constraints, in Nagothu, U.S. (ed) The bioeconomy approach, constraints and opportunities for sustainable development, Routridge, 1-23, 2020.
土地改良区の水管理をスマート化する農業情報システムの開発
本研究は衛星リモートセンシングを用いた水文モデルにより土地改良区用の農業情報システムを開発することを目的とする.これはi)水田の水入れ状況,ii)作付け分布,iii)末端水路用水量,iv)予想収量,v)大雨時浸水予測情報を準リアルタイムで土地改良区のPC上に配信するものである.
東南アジアを対象とした過去50年間の広域再解析気象データと村落レベル農業活動履歴の照合
統合的水資源管理のための「水土の知」を設える
総合地球環境学研究所 風水土イニシアティブ 基幹研究プロジェクト
平成23年度‐平成27年度
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世界灌漑農業アトラス’WAIASS’の開発
WAIASS(World Atlas of Irrigation Agriculture for Sustainability Sciences)は、世界灌漑農地マップをベースとした各灌漑農地の水資源・灌漑諸元・農業生産に関する情報が集約されたアトラス形式のデータベースです。灌漑農業水利用の解析への利用や世界の幅広い分野の関係者との情報共有を目的に、現在開発を進めています。
WAIASSの事例は動画形式でこちらの外部ページのGalleryページからご覧いただけます。
主な内容
時系列衛星データ解析プロダクト(2001年~現在)
主に神戸大で構築
・時系列灌漑農地マップ
・作付けパターンマップ
・水資源変動の影響マップ
地域灌漑農業情報
各国・地域の研究者との相利的ネットワークにより収集
・灌漑履歴
・灌漑管理情報
・水源情報
・農業生産情報
収録地域(2012年現在)
収録地域・内容は共同研究・研究協力者からのリクエストや情報交換によって今後も拡大(成長)します。
ギャラリー
メコンデルタのMODIS時系列画像 (2011年5月~2012年4月)
アラル海地域における水利用効率と塩害の制御に向けた気候にレジリエントな革新的技術開発
本研究は、長年にわたる綿花などの灌漑農業による大量取水により縮小したアラル海周辺において、塩性化した土壌や地下水でも生育可能な塩生植物の資源価値を探り、限界地の小規模集落でも持続的に農業を営める技術およびビジネスモデルを内部循環型塩性農業として開発・展開することを目的とする。長期間の気候データや地球観測衛星情報を用いた水循環解析を通じて、対象地域の利用可能な水資源量、蒸発散量や作物生育の状況を把握し、それらを日々の農業生産管理の実務に活用していく中で、今後想定される気候変動への適応能力を向上させる。また、塩害の進行を防ぐための灌漑排水管理、塩害が進行した土地における塩生植物の積極栽培による修復、および塩生植物の利活用を通じた、生産的で持続可能な農業を実現するために、塩分や乾燥に対する耐性や土壌塩分の除去能力、水利用効率の観点から最適な作物種の組み合わせを提案する。これにより、気候変動対策と農地塩分管理を体系的に実践教育する塩性農業の研究教育拠点を現地に構築する。